先達の優れた四コマを参考に。ずんずん読み進められるのが四コマの武器か。だとしたらテンポはとても大事だ。
どうよ? このマウスさばき!  悦に入って速く動かすことだけに集中してたら腱鞘炎に。マンガのほうはちっとも進まず。
四コマの 真相

四コママンガを描き始めてはみたものの、どうにもこうにもうまくいかない。なんでだろ? ううん。悩んだ末に出てきたこと。どうやらオレには『何故四コマである必要があるのか?』という根本的なところがわかってないらしい。さっきのように五コママンガでもいいだろうし、三コママンガでもいいだろうに。それでも十分長編のストーリーマンガを描く訓練になるんじゃないのか?
バイブルをひもとくと、そこに四コママンガでなければいけない理由が書いてあった。

四コママンガとは、話を四つの段階にわけて表現する方法だ。こうすることによって、意外と事が考えやすかったり、物語をつくりやすかったりする。
四コマは、いちばん上のコマから順に、「起」「承」「転」「結」になっている。
これは中国の詩の形態から名づけられた方法で、マンガのアイデアづくりに応用すると、ゆとりのある案がつくれる。中国の長い歴史が考え出した、物語のもっとも単純なかたちだからであろう。
「起」は原因。事件のはじまり。
「承」は、その事件を受けた話の発展。
「転」は、こういうことも起こった、おかしいぞ、と、思わぬところへ事件がひっくり返るような話。
「結」は、結論。
むだなコマは整理され、読者に訴えたいことが、はっきり表現される。(122ページ)


うむ。さすがは中国四千年の歴史じゃ。闇雲にコマの中に絵を描いていったって、無駄な情報が多くなってしまうんだね。『起承転結』で話を割っていくと、ちょうど四コマで物語がまとまりやすくなる。先ほどオレが作った五コママンガも、一コマ目と二コマ目は『起』としては同じ情報だ。「トラックに子どもがひかれそうになっている」という状況を一コマで説明できれば何の問題もない。イヤ、アレは全体的に問題アリだけどね。
またこんなことも書いてあった。

話の素材は、演繹法と帰納法を応用して発想する。
演繹法を使えば、はじめの発想から、結論までの道スジを、四コマにすればできる。
帰納法なら、「結」の部分をはじめに考えだして、残りの三コマがいちばんおもしろくなるように考えるのだ。(122ページ)


演繹法と帰納法。先月やったばかりだ。憶えたことが全て繋がってる。
以前のオレだったら、うんうん唸ったあげく、ちーともアイデアが出てこなくて自暴自棄。バンド仲間をドラムスティックで殴り倒しているところだったが、今は違う。オレは生まれ変わったのだ。演繹帰納を武器にスイスイと世の中の荒波を渡っていけるようになったのさ。 よし。まずはテーマを考える。
『正義の味方であるユキダルマッチョがちょっとマヌケなファンタジー』
これしかねぇ。
様々な案を考える。
まずユキダルマッチョは雪なので、雪にまつわる話にすればスムーズに話が進行していくだろう。逆に先月の話のように暑い国での話にしてもいろいろなネタが掘り起こせそうだ。
いろいろと難しいことも考えたが、結局シンプルなものが描きやすいことに気付いた。四コマはテンポで読ませることも重要な要素だと思ったからだ。いくらおもしろくても複雑難解なものはテンポを損ねる危険性がある。
そこで、オレが考えたのは次のようなお話。


「ユキダルマッチョ・ザ・スキーヤー」


「起」ースキーをするユキダルマッチョ。
「承」ー手前に大きなコブが。思わずコケるユキダルマッチョ。
「転」ーゴロゴロふもとまで転がり続け・・・。
「結」ー頭だけ大きくなっちゃった。
これは「スキーをするユキダルマッチョ」というテーマから話を膨らませたものだから演繹法といえるだろう。逆に「ユキダルマッチョの頭がでかくなる」というオチを先に考え、話をつくっていくのであればそれは帰納法。その場合、舞台はスキー場でなくても一向に構わない。要は頭がでかくなるためのおもしろいシチュエーションを考え出せばいいのだ。
四コママンガを作りたいが、どこから手をつけていいのかわからない、というばあいは、先ほどのように起承転結に分けて『字コンテ』のようなものを書いてみるのも手だ。自分が何を描きたいのかわかりやすくなる。

ふむふむ。演繹と帰納を頭で考えていただけだったが、こうして実践してみると、なるほど。頭の中がスッキリする。自分が何を描きたいのか、伝えたいのが自分の中で明白になるのだ。伝えたいものをしっかり把握していないと見る人は混乱してしまう。当たり前だね。それはロックンロールでも一緒だ。
おもしろいな。楽しいな。ユキダルマッチョとオレが一体化していくのがわかるぜ。オレがアイツでアイツがオレで。
しかし、こうなってくるとマンガではなく動画で動かしたくなってくる。アニメーションだ。しかし、ものの本を読んでみると、どうやら動画の場合、一秒間に30コマ使うらしい。例えば30秒のアニメーションをつくるとすると、30コマx30秒=900コマ・・・。4コマ描くのでさえ四苦八苦しているというのに、900とはこれまた気の遠くなるような話だね。コンピューターを使ったらできるのかな。でも、やり方がわからん。どっからどう手をつけていいのやら、さっぱりだ。
やりたい。でもできない。ストレスがたまるぜ。う゛ーん・・・。
うんうん唸りながら、夜は更けていく。


---つづく---

 
 ハギワラノリツグ プロフィール
千葉県出身の26歳。インディーズバンド「バックドロップス」のリーダー。
一応美大のデザイン科出身だが、在学していた4年間で学んだことは「オレはデザインができない」という一点のみ。音楽で生計を立てていくことを誓うも、ナカズトバズでやんす。今回2年ぶりに絵筆を持ちます。運だけで生きてます。よろしく。
あ。2nd アルバム「DELTA END」絶賛発売中です。

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