バイブルを読みまくる。
トイレでも読む。
風呂入りながらでも読み続ける。
疲れて寝ちゃった。
でもバイブルは手放しません。
大量のDVD。全部観てやるぜ!
チャップリンのつもりで借りてきたのに・・・
「キッド」違い。
目指す 笑い

今までは「キャラクターを作る」ということだけに一生懸命になっていたが、やはり、どうしても、キャラクターの性格だとか、立ち居振る舞いを自然と考えるようになってきてしまう。よく「キャラ立ちしている」という言葉を聞くが、これは、あるシチュエーションでおもしろい動きをしている人間を指して言うことが多い。いくらおもしろい顔をしているからといって、葬式にその顔で来られたら、当然、袋叩きにあう。どこにでもそのキャラクターが歓迎される世界がある。世界観がおもしろければ、そこに配置されたキャラクターも生き生きとしてくる。結果、キャラクターが「立って」くるのだ。
ユキダルマッチョだって、見た目は多少気持ち悪いかもしれない。イヤ。かなり気持ち悪い。ユキダルメシアンに至っては「気持ち悪い」どころか「気色悪い」だし、サイ王なんかそんな形容を通り越して、もはや愚の骨頂。でも、彼らが好かれる世界もあっていいじゃない。あんま気持ち悪いって言うな。
しかし、この気持ち悪いキャラクターがウケるためにはどうしたらいいのだろう。寝ずに一晩考えたが、やはり。
「笑い」だ。
何かトボけた世界で動き回ってこそ、オレの作ったキャラクターはウケるはずだ。一生懸命頑張ってるのに一生懸命に見えない。ドジを踏むけど愛らしい。そんなほのぼのした世界。しかし、その世界はどこかシリアスな問題を抱えている。トボけたストーリーの中から滲み出る悲哀。その全てを内包できるのが「笑い」だとオレは思う。
でも、そんな世界、ホントに作れんのか?
寝る間も惜しんでバイブルを読む。さすがに「マンガの描き方」と銘打つだけあって、ストーリー作りに関しても情報が豊富。本の約半分は物語作りの話題にページを割いている。

マンガは本来、この冗談、つまりジョークとユーモアを売りものにするものだ。そして読むほうをおもしろがらせ、カタルシス、すなわち気分をサッパリさせるためのものである。これをともなわないマンガは、マンガではなく、なにかべつの分野のものだ。たとえ一見深刻そうに見えたり、暗澹たるムードをもっていても、大きな意味でなにかしらおかしければ、やっぱりマンガなのだ。
では、おかしさとはいったいなんだろう。
外国人と日本人とでは、おかしく思うことがかなり違う。おとなでも子どもでも、男と女でも、また個人個人でもみんな違う。本来、主観的なものである。
ある人はすごくおかしいのに、べつの人はぜんぜんおかしくない。また、女性だと、箸がころげてもおかしい年ごろというのがある。まるっきり自分ひとりしかおかしくないことだってある。
ところが、マンガは、だれが見ても(あるいは、できるだけ大勢の人間が見て)おかしいものでなければならないのだ!
そこがむずかしい。これはたいそうむずかしい条件だ。(130ページ)


そしてここには書いてある。

チャップリンの映画を観ると、ひとり残らずといっていいほど、みんな笑いころげる。チャップリンの映画のおかしさとは、なんだろうか。
これからマンガを描くためには、どうしても、この「おかしさ」というもののコツをつかんでおく必要がある。
おかしいと、だれでも笑う。
ワッハッハと笑いとばす。プッと吹きだす。これは直接的な、反射的なおかしさだ。これを、ギャグという。
ちょっと時間をおいて、クスリと笑う。ニヤリとする。フフンと鼻で笑う。これは、陰性の笑いで、ユーモアがつくりだすおかしさだ。
チャップリンの映画では、この両方の笑いが、交互に、それこそ機関銃のようにたてつづけに発射されているのだ。おかしさは元来個人の主観的なものだと述べたが、これだけ豊富に盛りこんであると、十カ所のうち二、三カ所は笑えなくとも、七、八カ所は笑ってしまう。だから全部の観客を、十分楽しませるのである。(130ページ)


そう。オレの理想はここにあった。チャップリンだ。チャップリンの映画こそ理想のウケ方なのだ。ちんちくりんでチョビヒゲ、目の下にクマをたたえたチャップリンは決して気持ちの良いキャラクターではない。でも、彼がコミカルな動きをする。それだけでなんかおかしいのだ。逆転が起きる。チャップリンが愛らしい存在になる。
オレはTSUTAYAに走り、チャップリンのDVDを借りてくる。「チャップリンだけっつーのもかたよるなぁ」。ついでに他の映画も大量に借りる。そしてそれらを穴があくほど繰り返し見る。今まで映画なんてロクに観もしなかった。そのせいか、スポンジが水を吸うようにストーリーがオレの中に入っていく。いやぁ、映画ってホンットにいいもんですね(シベリア超特急)。部屋に籠もりっきり。たまに時計を見るが、その時刻が午前か午後かもわからない。何か臭うなと思ったらオレの体臭だった。久しぶりに風呂に入る。ヒゲを剃ろうと鏡を見ると、目の下にクマができてホントにチャップリンみたいね、オレ。

映画もマンガも、物語を画面で見せるという点では似ている。少し違うところは、映画のフィルムが連続した動きを表現するのに対して、マンガのコマのあいだには飛躍があり、動きが省略されているという点だ。
しかし、ドラマづくりということではかわりはないのだから、映画はマンガをつくるとき、たいへん参考になる。ヒントがいっぱいつまっているので、評判になった映画ぐらいは観ておこう。(165ページ)


大事だね。


---つづく---

 
 ハギワラノリツグ プロフィール
千葉県出身の26歳。インディーズバンド「バックドロップス」のリーダー。
一応美大のデザイン科出身だが、在学していた4年間で学んだことは「オレはデザインができない」という一点のみ。音楽で生計を立てていくことを誓うも、ナカズトバズでやんす。今回2年ぶりに絵筆を持ちます。運だけで生きてます。よろしく。
あ。2nd アルバム「DELTA END」絶賛発売中です。

バックドロップス Official Site



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