手塚治虫のマンガの描き方
(講談社)
天才漫画家 手塚治虫氏が書いた、今となっては隠れた名著。
テクニックに関することだけでなく、メンタルな部分についても積極的に言及。プロからアマチュア、全くのシロウトさんまで読んで損ナシ。原点。
コンピューター、接続!
WebTV、起動!
ペン大王曰く
「さすがに発色いいね」
iMac、セットアップ完了。
とりあえず、チャットをしてみることに。出会い系サイトにアクセスだ!
後で気づいたけど、コレ、ただのワープロソフトでした。ギャフン!
グラフィックに挑戦。初っぱなから、ウォーホルもビックリな絵が完成。オレ、天才!
コンピューターで 再生

「ペン大王・・・。どうしよう・・・」
「ん? 何を?」
「イヤ、コンピューターのことっすよ。買うって言っても、オレ、今一文無しだし、貯金をおろすって言っても、残高287円だし」
「まぁ、オマエのためだからな。ワタシもそんなに手持ちはないけど、ちょっとだけなら貸そうか?」
「いくら?」
もぞもぞと財布の中身を覗くペン大王。
「えーとね。3500円くらいかな」
「おぉ。大王だけあって、さすが。金持ちですね」
というわけで、オレとペン大王は秋葉原へ。様々な機材がズラリと並ぶ。でもこれらの機材がどんな役目を果たすのかはオレにはわからない。
その機材の中から一つを指さし、
「このあたりがいいんじゃない? 値段も手頃だしね」
と、ペン大王。
「ほう。でもオレに使いこなせますかねぇ」
「うーん。大丈夫だと思うよ。コレと同じ形のやつ、トゥナイトIIでも映ってたし」
ホントに大丈夫か?
でも、現段階ではオレよりペン大王の方が知識を持っている。オレはおとなしくペン大王に従うしかない。購入し、また家へ舞い戻る。

袋からコンピューターを出す。しかし、これをどうしたらいいのかわからない。
「ペン大王、コレ、どうしたらいいんですか?」
ペン大王は呆れた顔でオレを見る。もちろん具体的には表情は変わってないんだけどさ。でももうわかるようになっちゃった。慣れってすごいな。
「全く、このIT革命の真っ直中にいて、ホント、オマエは何も知らないんだな。ここにコンピューターを突っ込むんだよ。そうするとインターネットもできるようになるんだ」
「え? コレって・・・。ただのテレビですよ・・・?」
「これが『WebTV』ってやつだよ。トゥナイトIIでやってたから間違いない」
そうか。コレがWebTVってやつか。さっそくテレビに端末を差し込もうとするが、型が合うジャックがない。どうしたらいいのか聞くと、「そんなの合いそうなところに無理矢理差し込んじまえばいいんだよ」とペン大王。言われたとおりに無理矢理差し込んでみる。「ギョリッ」っというイヤな音と共に無事接続完了。ってホント無事なの?コレ。
「ヨシ。じゃぁ、電源を入れてみよう」
おおお、映った映った。すごい。コレがWebTVか!
「これでオマエもいっぱしのIT革命児だな」
「えぇ! 感無量です!」
しかし、二人でしばらく画面を見ていたが、全く画面が変わる気配がない。
「なんかおかしいな」
「ねぇ。全然動く気配がないっすね」
「このWebTV、不良品だな。おい、ノリツグ、抗議の電話かけてやれ。そんでもって新品と交換してもらえ」
怒り心頭でさっそく電話をする。
「あーもしもし! あのねぇ! オタクの製品買ったんだけどね! 動かないのよ、インターネットが! ん!? VAIO!? 何言ってんの、違うよ! VEGAだよ、VEGA! ・・・え・・・? はい・・・。あ、そうなんですか? はい・・・はい・・・。すみませんでした・・・」
ガチャリと電話を切ると、オレ、思いっきり掌底。ペン大王は綺麗な弧を描きながら床にドチャリと落ちた。
「このバカたれ! コレのどこがコンピューターだ! 奮発して買ったVEGAが壊れちゃったじゃねぇか」
「え・・・? コレ、コンピューターじゃないの?」
「これはなぁ、『マウス』っつーんだよ! VEGAはただのテレビだよ! オマエ、もう帰れ!」
一日で二発殴られたペン大王はフラフラしながら帰っていった。

はぁ・・・。この丸顔を信じたオレがバカだった。しかし、いくら後悔してもVEGAはもう戻ってこない。手元に残ったのはマウスだけ。これでどうしろと言うのだ。さっき電話で対応してくれた人が親切だったので「コンピューターにはMacとWindowsがある」ぐらいの基礎知識は教えてもらえることはできた。しかし、それだけじゃ絵は描けない。誰かコンピューターに詳しいヤツに聞くことにしよう。ペン大王はもうアテにならん。
バンドメンバーのフルカワにさっそく電話。日頃から「今時の女のハートをキャッチするためにはコンピューターぐらい知らないとダメだ」と豪語しているヤツだ。アイツならいろいろと知っているだろう。
「もしもし、フルカワ?」
「お、ノリツグ。女のことなら間に合ってるよ。でも、まぁ、キープしとけ、っていうなら話だけでも聞いてやってもいいけどな」
「あのさ。オマエ、コンピューターのこと詳しい?」
「詳しいもなにも、家にあるよ。まぁ、最近は女関係が忙しくて使ってないけどな」
「持ってる!? なんてやつ? Mac? Windows?」
「イヤ、VEGAってやつなんだけ・・・」
ガチャン。
続いてキヨタに聞く。
「あ、もしもし、キヨちゃん?」
「どうしたの?」
「あのさ、キヨちゃんってコンピューター持ってる?」
「うん。iMac持ってる。これで作曲とかもしてるし」
「マジで? それオレに貸すことできない?」
「別にいいけどさ。壊さないでよ」
「ホント? じゃぁ、貸して。あ。でも、マウスはいらないや」
「なんで?」
「ん・・・まぁ・・・いろいろとね・・・」
翌日、キヨタがわざわざクルマで届けてくれた。キヨタの話では一応簡単なグラフィックソフトもインストールされているとのこと。ついでに基本的な操作方法も教えてもらう。ヨシ。これで絵が描けるぜ。
電源を入れ、とりあえずコンピューターに慣れるため、テキトーに絵を描いてみる。頭の中にあったイメージがモニタ上に展開される。WYSIWYGとはよく言ったものだ。瞬く間にオレの頭の中が画面上に。おぉ。コレがオレの頭の中。すげぇぜ、っつーか、大丈夫か?オレのアタマ。
まぁ、とにかく、これでオレもIT革命戦士の仲間入りだ。あっけなく戦死しないようにがんばろうっと。
ノってきたオレは、続いてユキダルマッチョとユキダルメシアンをコンピューターで描く。
とにかくコイツらを気持ち悪いところから遠ざけなければいけない。おそらく線がグニャグニャしているのも気持ち悪い原因だろう。
そんなもん気にするな、と言う人もいるだろう。事実、手塚さんも「マンガは落書きの精神だ」とバイブルに書いていた。しかし、全てが落書きでよいと解釈してはいけないとオレは思うのだ。ロックンロールも、ロック魂ばかりを売りにしてみんなに受け入れられるほど甘くはない。そのロック魂の表現の仕方というのがあるのだ。そのためにはある程度の基本的にテクニックがないと表現できない。落書きでもいい。でも、落書きではエンターテインメントに昇華しにくいことも事実だ。
といわけで、まずは線を整理することに。


はぁ。手塚さんは遠いなぁ。それに、ユキダルマッチョはともかく、ユキダルメシアンは相変わらず気持ち悪ぃな。 でも、少しは生々しさが消えて良くなったような気がする。コンピューターってのは素晴らしい道具だね。ペンを使ってキレイな線を描くための修行を一からやってたら、オレの一生が終わってしまうところだったぞ。