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------ ペン大王
安野さんはキャラククター作るっていうよりは、やっぱり漫画家さんです
よね?
------ 安野
うん、そうですね。でも私の場合、作品を作るときはキャラクターありきってタイプなんですよ。
------ ペン大王
あれ、そうなんですか。
------ 安野
そのキャラクターも、「この人はこんな性格で」って机の上で考えたりするんじゃなくて、その人が何かをやっているシーン、例えば、友だちとケンカしている、
その表情とか、そういう印象的なワンシーンが出てくるんです。
------ ペン大王
ほほぉ
------ 安野
逆に世界とかストーリーを先に作って、それに合わせたキャラクターにしちゃ
うと、マンガとしてはつまらないものになることが多いと私は思います。そういう都
合のいいキャラクターって、例えば熱血の子だからここで動いてくれるだろうと思っても、意外に動いてくれないんですよね。
------ ペン大王
それそれ!よく漫画家さんや作家さんが「キャラクターが勝手に動いちゃって」とかって言いますけど、それってどんな感じなんですか?ボクらパンピーにはわからない世界なんですけど。
------ 安野
もう、勝手に動き回ってしまうんですよ。立てたプロットどおりには絶対行かない。ここでこう言ってくれたらラクなのにと思うのに、むしろ「えー!」っていうような、自分でも「待ってくれよ」みたいなことになってしまう。結局、自分で描いているんだから、自分の思うように動かせるはずなのに、全然思いもよらない、「そっちに行かれると来月困るのですが…」という方向に勝手に動いてしまうんですよ。
------ ペン大王
へ〜っ、おもしろいなぁ、じゃ、安野さんのマンガって最初のプロットどおりに行ってないものが多いんですか?
------ 安野
そうですね、というより、プロットどおりに行ったものはつまんないです(笑)
。
------ ペン大王
キャラクターを作る時に、実在の誰かをモデルにしたりするんですか?
------ 安野
それはあります。でも、その人そのままではなくて、ミックスされるっていう
のかな、例えばワガママな人がいたとして「この人キライ」とか思っていても、そのワガママさを大げさにしてみると笑えたりして。そんな感じで身の回りにあるものすべてを見落とさないようにして、材料にしていくというか…
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------ ペン大王
じゃ「ハッピーマニア」のシゲタカヨコはどんなシーンから出来たんですか?
------ 安野
第一巻の最初のコマの雑誌の占いページを見て「どうしよう、ラブ運が最高」って言ってるシーンですね。あれはね、美容院に行った時、たまたま隣に座った子が、
目の前の雑誌の山の、占いページだけをバーッと見ていて「なんだこの人は?」とか思って。「悩んでるのね」なんて思ったりして(笑)、そんなことが印象に残っていて、後で、自分の中のいろんな材料と再構築されて、できたキャラクターなんです。
------ ペン大王
ははぁ、なるほどねぇ。
------ 安野
いろんな材料が自分の中にバラバラに置いてある。で「このパーツでキャラを作りまーす」ってなると、それに見合ったものがヒューヒューヒューって集まってきて、1個に固まるって感じですかね。
------ ペン大王
それは「よし、キャラを作るぞ」って自分に号令をかけて、作っていくって感じなんですか?
------ 安野
うーん、そういうケースもあるし、自然発生的に生まれてきちゃうパターンもあります。例えば、私の単行本の後ろに「ATOGAKIクン」っていうのがあるんですけど、これはまさに“発生”しましたね。あとがきを描かなきゃいけないのに、何も出
てこなくて、一応、紙に欧文で“ATOGAKI”って描いて「さて、どうしよう」と思っ
て、苦しまぎれに“クン”とかつけてみたら「ATOGAKIクン?かわいいかも」とか思っ
て、もうあとは本当に自然に生まれたキャラなんですよ。
------ ペン大王
ふーむ、なるほど。“自然に出てくる”っていうのは、きっと自分のどこかが出てくるんだろうなぁ。そういう意味だと、よく「キャラには作者が投影されている」なんて言われますけど、例えばシゲタカヨコの安野モヨコ度はどれくらいですか?
------ 安野
けっこうありますよ、30%くらいはあるんじゃないかな。
------ ペン大王
あ、そんなにですか。どんなところですか?
------ 安野
あれは友だちの話とかも相当ミックスされたキャラですけど、アホなところとかはかなり私だなと(笑)
------ ペン大王
じゃ、ATOGAKIクンの安野モヨコ度は?
------ 安野
あれも濃いかなぁ。私って家族や本当に仲のいい友だちとかの前では赤ちゃんみたいなんですよ。眠いと怒ったり、お腹が空くと泣いたりとかして(笑)
------ ペン大王
だからATOGAKIクンはベビー服なんですか?
------ 安野
いや、そういうわけでもないんですけど、なんでだろう、ま、でも、赤ちゃんってかわいいじゃないですか。
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©安野モヨコ/祥伝社フィールコミックス |
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ハッピー・マニアの主人公
シゲタカヨコ |
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©安野モヨコ/祥伝社フィールコミックス |
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------ ペン大王
全然、話変わっちゃいますけど、安野さんの今後の目標はどんなことですか?
------ 安野
うーん、漫画家としてはやっぱり手塚治虫先生が目標かなと。
------ ペン大王
おぉ!
------ 安野
手塚先生のあくなき上昇志向というか、あんなに大先生なのに、若手の作家が
出てくるとライバル意識を燃やさずにはいられないというところですかね。常に自分が一番おもしろいマンガを描いていたいという姿勢はスゴイなと。
------ ペン大王
なるほどぉ。
------ 安野
私もきつい時なんかは時々「もういーか」って思っちゃったり、「人としての幸せはいったい…」なんて思うと、何もここまでしなくてもと思ったりするんですけど、でもやらずにはいられないんですよね。
------ ペン大王
安野さんはデビュー当時からそんな風に考えてたんですか?
------ 安野
いえ、全然。むしろ「早く結婚したいなぁ」なんて思ってたくらいで(笑)
------ ペン大王
じゃ、そんな風に思うキッカケって何だったんでしょう?
------ 安野
ある時期、本当に「命があぶないかも」って思うくらい寝ないで大量に仕事をしていた頃があって、それは「自分がどこまで行けるのか、見たい」っていう気持ちなんですよね。「あと10ページ描いたら本当に死ぬ
ぞ」ってくらいハードで、それで も「まだ描きたい、この先に何があるんだろう」ってなった時に、あぁ、このすっごい先に手塚先生がいるんだなみたいな気持ちになったんですよ。
------ ペン大王
うわー、すごい、すごいとしか言いようがない…
------ 安野
で、やっぱり大量生産している作家さんと話をした時に、その人は「手塚先生
の背中がちょっと見えた」(笑)とか言ってるんですよ。私はまだそこまで行ってないんですけど、自分の中にあるものが全部紙の上に描かれてしまった、その後に何が出てくるのか、見てみたいですねぇ。
------ ペン大王
はぁー、ものを作る仕事ってやっぱり、深いですね〜。えー、では最後に
このサイトに来てくれた人に何かメッセージとか、アドバイスをいただきたいんですけど。
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「眠いと怒ったり…」と
照れながらも告白!! |
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©安野モヨコ/講談社 |
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------ 安野
そうですねぇ、たくさん描くよりも、自分の好きなもの、かわいいと思うものを描くことが大切なんじゃないかって思います。人に何を言われても、自分はそれが
好きとか、自分は何回も見たいとか、何回も描きたいとか、そういう気持ちよさを大事にするといいんじゃないかなぁ。
------ ペン大王
ははぁ。
------ 安野
例えば、かっこいいかもと思って作ったキャラでも、自分で2度と描く気がし
ないとか思ってしまったキャラは、他の人にとっても同じなんですよね。かわいいと
か好きっていうのは、人間が気持ちがいい状態なんだと思うんですよ。その気持ちよさを味わうためには、まず自分がそのキャラのことを“好き”とか“かわいい”とか
“触りたい”とか“見たい”とかって思うことなんじゃないですか。まず、自分が楽
しんで描く。これだと思います。
------ ペン大王
楽しいお話をありがとうございました。
POPでおしゃれで今風の作品とは対照的に、 マンガに対しては熱血でストイック。そんなギャップが、
なんだかカッコよかった安野モヨコさんでした。 やっぱし一流の人ってスゴイよねぇ、ペン大王も勉強になったぜ!
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