阿仁屋優 |
「須田明の実家はたしか隣町のコザだろ。沖縄をロケハンするんだったら、ふつうは景勝地に行くか、もっと基地の町としての内実を探るんだがね」 |
円城寺満 |
「いまの俺はまったくそれに興味がない。作品のテーマ、登場人物の設定がここにこさせるわけで、それさえ全うしたら充分なんだ」 |
阿仁屋優 |
「やけに肩肘張った言い方だな。テーマってなんだよ」 |
円城寺満 |
「言わなかったっけ。混じる血と交じる肉、世界を変えるのは純粋さよりも異物が紛れ込んだときだと」 |
阿仁屋優 |
「だんだんわかりにくくなる」 |
円城寺満 |
「映画も人生も同じだ。今度の映画は、俺にとってフィルムと故郷(くに)へのレクイエムであり、独身生活の総決算。次からはHDで撮るつもりだし、津村美沙とのあいだで子供を作る。そしてリスクを背負い込むむ」 |
阿仁屋優 |
「俺はてっきり、日比野まりの存在が重要なモチーフだと思ってた」 |
円城寺満 |
「(吸殻を灰皿に捨てながら)次元が低いな、阿仁屋は」 |
阿仁屋優 |
「なんだよ、その決め台詞。話は逸れてく一方だっていうのに」 |
円城寺満 |
「それそれ、それは重要な命題だ」 |