いつも見慣れたスパイラル(東京・青山)も今日ちょっと雰囲気がちがう。何が違うってステージが組まれているし、 気持ちの良いビートが大音量で流れているし、白・赤・黒のストライプだらけだし。そう、5月24日ばかりは1日中スパイラルは mod's hair 一色だったのだ。世界中から注目される気鋭の音楽クリエイター タツヤ・オオエ (aka OE/Captain Funk)と共にcafe@FRANKENがプロデュースを行ったこのイベント、かなり凄いことになっていたらしい。今回はその全貌をレポート!

Event OpeningTatsuya Oe + Paradise Jam
BGMが止まり一瞬の静寂が訪れた。その静寂を引き裂くノイズ音と共にステージに登場したタツヤ・オオエ によるオープニングアクト。"The Beginning" と名付けられたこの曲、複雑なビートとリズミカルな電子音が会場に設置された4つのサラウンドスピーカーから飛び交い、オーディエンスの期待感を煽っていく。イベントのCMを始めとする全てのグラフィックを担当した映像クリエイターチーム Paradise Jam によるmod's カラーである白・赤・黒を基調にした映像が音とシンクロ。スパイラルのアトリウムの壁に沿うように、湾曲して設置されたそれぞれ200インチの2面のスクリーンにプロジェクションされた映像と音が相まって、疾走感のある空間を作り上げていく。

Live PerformanceNUMB [Revirth]
日本のブレイクビーツを代表し、高い評価を得ているNUMBのライブ。2台のノートパソコンとフィジカルコントローラーを駆使して行われるNUMBのパフォーマンスは時に静かに、そして時に激しく、緻密に計算された音楽を刻む。フィジカルコントローラーのノブをひねり、音の表情を刻々と変える姿はさながらマッドサイエンティストのよう。徐々にビルドアップされていく音達がオーディエンスを昂揚させる。

Creative Session [White]DJ ABE+RAMP/ROOT+cafe@FRANKEN
今回のイベントの中で行われた新たな試みの一つ、クリエイティブ・セッション。既存のオーディエンスとアーティストとの関係よりも一歩密接な関係の提案。DJ ABE+RAMP/ROOT+cafe@FRANKENがナビゲーターを務めた一つ目のクリエイティブセッションは ableton live という音楽ソフトを使用し、リアルタイムにビートを作り上げていくパフォーマンスだ。2台の Apple PowerBook G4 から2面のスクリーンにプロジェクションされるガイド映像に合わせてオーディエンスがしたハンドクラップを、ableton live が動いているもう一台の PowerBook G4 に取込んでいく。今回このパフォーマンスのために楽曲を書き下ろした DJ ABE がその場でハンドクラップのクオンタイズ*し、音のピッチ等を変化させ楽曲を作り上げ、大いに会場を沸かせた。
*クオンタイズ:レコーディングされた音のタイミングを調整すること。ジャストタイミングに合わせたり、逆にわざとずらしてグルーブを出したりする。

Live PerformanceBuffalo Daughter
日本国内はもちろん海外でもカリスマ的人気の Buffalo Daughter。このライブに向けて作られた"Greening" からスタート。久しぶりのライブということだが、そんなことをみじんも感じさせないパフォーマンスはさすがの一言。アナログシンセサイザー、ギター、ターンテーブル、ドラムが紡ぎだすBuffalo Daughterのサウンド。ファットなサウンドにSugarとYumikoの美しいボーカルが絡み、強力なメッセージがスーッと心に入ってくる独特の世界観を展開。

Media Performance66b/cell
ARS ELECTRONICAを始めとしたイベントで数々のメデイアパフォーマンスを行い、高く評価されている 66b/cell。ダンス、映像、音楽がモーションデバイスなどのギャジェットと出会いオリジナルなパフォーマンスを見せる。スタートと共に頭部にヘッドライトをつけたダンサーがゆっくりとオーディエンスを照らしながら登場すると、一瞬にして66b/cellワールドが構築されていく。白と黒の衣装に身を包んだダンサー達の磨き抜かれた肉体は照明によって赤く染められ、そのしなやかな躍動と、ダイナミックな映像でオーディエンスを魅了した。
異彩を放っていたのがSaccade-based Displayと呼ばれる特殊LEDディスプレーで、それを見ながら頭部を振ると残像によって様々な図形が出現する。
Saccade-based Displayについて>>

Creative Session [Red]66b/cell
66b/cellがナビゲーターを務めた二つ目のクリエイティブセッションは直径1メートルはあろうかという巨大なボールを持ってダンサー達が登場するところからはじまった。ジャイロセンサーと圧力センサーを内蔵したビニール素材で空気入りのボールは、その向き、高さによって映像と音を変化させ、叩くとLED照明により赤く発光する。オーディエンスは楽しそうにこの不思議なボールを追いかけ、接していた。

Creative Session [Black]Tatsuya Oe + Paradise Jam + Motoi Ishibashi
タツヤ・オオエがセッションナビゲーターを務めた三つ目のクリエイティブセッションはビデオカメラから撮影されたオーディエンスの動きを検出し音へと変換させ、タツヤ・オオエ とライブセッションをしようという試みだ。カメラから取込まれた映像はコンピューターに送られ2諧調の映像として解析され、スクリーンに写される。スクリーンには「スコープ」と呼ばれる緑色のホットスポットが映し出されていて、オーディエンスの身に付けている黒い部分が「スコープ」に触れると音を奏で、映像を再生する。Instruments, Sound Effects, Beat の3回のセッションが行われ、オーディエンスの音とタツヤ・オオエのサウンドが絡み合い新しい作品を作り上げた。

Live PerformanceTatsuya Oe + Paradise Jam
音楽クリエイター/ミュージシャン/DJ として絶大な人気を誇り、常に音と真剣に向き合い新しい試みを発信し続けるタツヤ・オオエが今回はギターサウンドと電子音を織り交ぜたパフォーマンスを行った。Paradise Jamが作り出す有機的であったり、幾何学的であったり縦横無尽に姿を変えるスリリングな映像がサウンドとシンクロし、ストイックなまでに洗練されたライブを展開。グルービーなリズムとサラウンドシステムにより四方から襲ってくるアグレッシブなサウンドがオーディエンスの音に対する感覚を覚醒させる。Nothern Brightの新井仁とサウンドエンジニアの林田涼太を迎えたスリーピースバンド構成で、アルバムとはまた違う、大胆にアレンジされた楽曲を披露した。

More Information
▼BARKS     ⇒ Live stream & interview
▼BARKS     ⇒ Music Clip "All Around" WM 300K

Campaign Buzzmod's hair
イベントを追体験できるスペシャルCDをmod's hairのウエブサイトでプレゼント告知。(4曲+映像を収録)イベントオープニング曲 Tatsuya Oe [The Beginning]、 NUMB [ISHI 2003 live edit]、66b/cell [Theme of "test-patches" spiral version]、イベントテーマ曲 Tatsuya Oe [All Around live version]に加え、ロンドン発世界最大のムービーイメージ・フェスティバル「OneDotZero7」(2003)にも選出されたイベントテーマ映像"All Around"のライブバージョンを収録!

4つのライブパフォーマンスと3つのクリエイティブセッションを通して音と映像の新しい可能性を提案したこのイベント、2時間30分のプログラムがあっという間に過ぎた。ゼイタクなまでに凝縮された屈指の音楽・映像クリエイターたちとのコラボレーションはお腹一杯、大満足。イベント直後はもう食べられないと思っていた cafe@FRANKENチームのメンバー達でしたが、もうそろそろ、またお腹が空いてきました。今度は何にしようかなぁ?

mod's hair Discover your style 2003
OE Electronic Sound and Vision Collection
Produced by Tatsuya Oe (aka OE / Captain Funk) + cafe@FRANKEN
Tatsuya Oe Band
Total Producer / PerformerTatsuya Oe (OE / Captain Funk)
GuitarHitoshi Arai (Northern Bright)
Sound EngineerRyota Hayashida (teknobo)
Buffalo Daughter
Artist ManagmentTomoko Tahara (Buffalo Ranch)
NUMB [Revirth]
Artist ManagmentShinichiro Takahashi (Soundscape Corp.)
66b/cell
Artist ManagmentInozo
Paradise Jam
Creative DirectorKoji Ikuta
Art DirectorKyoko Kakehashi
CGI / EditYuichiro Akao
Session Navigator [White]
Sound Creator / PerformerShibuichi Abe (DJ ABE)
Artist Management for Mr. Abe Yasunori Mori (Space Craft Produce)
Visual Creator / VJRAMP [You-ki Nemoto, Nobuhisa Ito, Tomonori Hori]
Visual Creator / VJROOT [Tomohiro Matsumoto]
Session Navigator [Black]
Media EngineerMotoi Ishibashi
Camera 1Yoshihiro Kunihara
(Tokyo National University of Fine Arts and Music)
Camera 2Hiroki Nagasawa
Event Unit
Stage DirectorHidenori Tamura (tech-noir)
Public Access / Sound SystemHiroshi Kobayashi (Mixture Of Sound)
Visual SystemSeigo Hirasawa (System Rasa Ltd.)
Lighting and EffectTakahiko Takeda (WIPEOUT)
Katsumi Ozaki (ALIVE)
Stage and DisplayKoichiro Nakamura (NAKATEN)
Naohiro Sato (NAKATEN)
Event ManagerManabu Ampo (IMAGINE)
Event ProducerDaisuke Kobayashi (IMAGINE)
Spiral/Wacoal Art Center
Chief CuratorTsutomu Okada
Spiral gardenTaro Inamura
Spiral gardenDaisuke Komuku
Special Thanks
Mari Tatsumi, Hiroyuki Sato (Apple Computer), Mr. Tomita (High Resolution), Eiichi Kaneshiro (Moonlight Cafe), Tamio Suenaga (HEART&COLOR Co.,Ltd), Tetsuo Shiga (INDIVISIO Inc.), carrystyle, Kunihiro Ichikawa, Motonari Endo, Rou Tamura
Produced by cafe@FRANKEN
DirectorYoshiaki Tada
Assistant DirectorTetsuya Ishihara
Production ManagerFumio Moro
PlannerToshihiro Ichikawa
ProducerShoichi Izumi
Discover your style 2003 / OE Electronic Sound and Vision Collection