曲を作ってみよう

私のまわりには音楽を作っている人よりも、映像を作っている人の方が多いです。そんな状況だからみんな、無責任に「あのさー、4分32秒で疾走感がありながら哀愁が漂うポップでキッチュな曲作ってよ」とか言って来ます。心の中では「そんなもんできるか!」と叫びつつその人には「いいよ」と気軽に私は答えます。自分の作ったことのないタイプの曲や、作りたくないタイプの曲を作るのは大変です。でも、作るものが音楽である限り、必ずなんらかの発見があり、なんらかのやくには立つはずです。今まで作ったことのない曲を作るのはとってもチャレンジングな事なのです。仮に自分の目指す音楽的世界があったとしても、それ以外のモノを作ってみる事は勉強にもなるし、意外と楽しいものです。

そこで、第1回目のお題は:「ミハル* が神楽坂でパラパラを踊りそうなユーロビート」です。

しょっぱなからすごいものを作ることになりました…。
なんでいきなりユーロビートなのかというと:
・作ったことがないから(チャレンジングですね)
・楽曲を構成する「お約束」的なことが多く説明がしやすそうだから
・今作っておかないと、次のパラパラブームがくるまで10年位待たなければならないから…
です。

まず、曲を作る時はリスナーを明確にイメージした方が作りやすいです。今回の場合は「ミハルが神楽坂でパラパラを踊りそうなユーロビート」です。言い換えればギャル系の今時の女の子がはやりのクラブで気持ちよくパラパラを踊ってくれるような曲を作らなければなりません。さらに突き詰めるとここで出来上がった曲が仮にクラブで流れて「ムリッ!これじゃおどれなーい!」と言われてしまっては元も子もないと言うことです。これが前章で書いた「たくさんの人に気に入ってもらう」と言うことです。

■ターゲットを特定する
この場合ターゲットは渋谷・六本木・神楽坂等にいるギャル系の女の子(こんがりと焼けたスーツ姿の男の子もですね)になります。ファッション・ライフスタイルなどは実際に街に出てみたり、テレビを見ればだいたい分かると思います。実際何回かクラブに行ってみるのも良いでしょう。

■曲のスタイルを分析する(特徴を掴む)
ユーロビートは当たり前の話ですがダンスミュージックです。日本ではこれに合わせてパラパラを踊ります(海外ではどうなんでしょう?)。今、流行っているユーロビートは高速でアグレッシブなタイプです。 特徴としては:
・160 BPM* 前後でハイスピード
・基本ビートはバスドラムの四つ打ち(ドン・ドン・ドン・ドン)
・+16ビートのハイハット(ツクチー・ツクチー・ツクチー・ツクチー)
・高速かつドラマチックに展開するシンセブラスサウンド
 (ぱーぱっっぱーぱぱーぱぱぱぱ)
・オクターブを交互に弾くベース(ンダー・ンダー・ンダー・ンダー)
・かけ声風サンプル

■曲を聞いた人がどのような反応をするのか
ユーロビートを聞いてサメザメと泣く人はあまりいないと思います。だいたいが楽しく踊るでしょう。パラパラを踊るわけですが、これがどんな踊りかよく見てみましょう(よく見るまでもないですが…)。一番特徴的なのは腕です。ビート、シンセブラスサウンド、歌詞に合わせて高速にヒラヒラと動きます。たまに決めのポーズをとります。下半身はリズムに合わせて左右に揺れています。みたままです…。なぜこのような事をわざわざ書いたかと言うと、パラパラはどういうモノかを把握すると、上に書いたサウンド的要素の必然性が見えて来ます。逆かもしれませんけど…ユーロビートがああいう曲だからパラパラが今の形になったのかもしれません。既存のスタイルの曲を作る場合は実際にそれを聞いている人たちが曲にどう反応しているか見るのが近道です。オリジナルのスタイルを作ると言う事に関しては回を重ねるごとに考えていきましょう。

必然的に以下の要素を盛り込む事になります:
・高速で乗りやすいリズム
・単調にならないためのフィル*
・高速かつドラマチックに展開するシンセブラスシーケンス
・開放感のあるサビやリズムの決め




ミハル:笹原さんのところのCG娘。

BPM (Beat Per Minute)
一分間に何回ビートを刻むかを表す数値。

フィル
一般的に「おかず」とも言われる、ふだんの曲の進行とちょっと違うキャッチ−なフレーズ。