第八回「リアルでゴー」の巻

一般すぎるほどの一般人、人間最大公約数ことハギワラノリツグが一流のキャラクターデザイナーになるために、一年間どころかいつ終わるかわかんない、そんな長い時間拘束される、ある意味サディスティックな、そしてどっかで聞いたことあるような企画です。
手元にあるのは「手塚治虫のマンガの描き方」という本、一冊のみ。
本を頼りに、手塚治虫に追いつけ追いこせ。
第二の手塚治虫を目指して、半分無理だと悟りながらもガンバります。
だからみんなもただ見てないで、ガンバレっつーの!

2002年幕開けの瞬間。
めでたさを体現。
なんかオチた。
DVD物色中。
その時・・・!
ハムナプトラの隙間から
コンニチハ。
cafe@FRANKENプロデュースのDVD。キャラ創出身のキャラクター達も大活躍です。
久々

レディース&ジェントルメン、おとっつぁんおっかさん。アケチャウヨー。2002年にナッチャウヨー。カウントダウンだ、いくぞー! 3、2、1、コンビニー!

・・・って、肉まんほおばりながらFRIDAY立ち読みしてる間に明けちゃったよ。2年連続でコンビニで年越し。どうなっとるんだ、オレの人生。というか、どうなったんだよ、オレを一流キャラクターデザイナーにしてくれるっつー話は。ホントにあのペン大王とかいう奇人は半年もどこで油売ってやがんだ。もう現れないなら現れないで別にいいんだけどね。でもペン大王がいない間必死になって製作したユキダルマッチョSUPERが日の目を見ないのだけは残念だね。
などと思いを馳せながら迎えた新年。心機一転ロックンロールに没頭するぞー! あ、肉まんもう一つください。

コンビニを出て、さてどうしようか。今晩は映画でも借りて朝までダラダラしようかしら、ってわけでTSUTAYAへ。そういえばコレ観てないんだよな、なんて言いながらあちこち吟味しているとおもしろそうなDVDを発見。「絶叫ジェットコースターBEST10」? ふぅん。部屋にいながらジェットコースターのスリルを味わえるってわけね。絶叫って言ったってオレ、歌手じゃん。そんなにむやみに大声出してノド潰すわけにもいかんし。それにある意味ビジュアル系だし・・・ん? どこかからオレを呼ぶ声が・・・。
『ノリツグー』
ほら、やっぱり。どこからだ・・・? って、うぉ!? ペン大王、細っ!
「何やってんですか、こんなところで!?」
「何って見りゃわかんだろ」
「見てわかんないから聞いてんですよ」
「このジェットコースターDVDの販売促進係やってんだよ。お客さんが買おうかやめようか迷ってるときに、オレのオススメトークがお買いあげにつながるって寸法さ」
「逆効果だと思うんですけど・・・」
「んー、やっぱり。みんな逃げてくんだよなぁ」

DVDの間からニュルンと出てきたペン大王と外へ。ペン大王は疲れているらしく、無口だ。それはオレと会っていない間に過ごした激動の日々を物語っているかのようだった。表情からは伺い知れないが(コイツのこの顔から何か読み取れるヤツがいたら教えてくれ)オレにはペン大王の背負う重い十字架の存在をはっきりと感じることができた。
「大変でしたね。心中お察しします」
「フッ・・・やっぱりオマエにはわかっちゃうんだな」
「そりゃわかりますよ。昨日今日出会った仲じゃないですからね」
「大変だったよ・・・あの隙間に入り込みながらのセールストークはな。息できねぇしみんな逃げてくし・・・」
「そっちの話は聞いてねぇよ! だいたいね。アンタこの半年間何やってたんですか? 連絡のひとつもよこさないで」
「イヤ。ちゃんと働いてたよ。コレ作ってたんだよ」
そう言ってペン大王が差し出したのは先ほどのジェットコースターDVDとラブホテルDVD。
「え? コレ、ペン大王が作ったんですか?」
「ん・・・まぁ・・・作ったというか、みんなを後ろからバックアップしたというか、ムードメーカー的な役割に徹したというか・・・」
「結局、何一つ役に立ってないってことですね」
「一言でいうとそうなるね・・・あ! でもさ、ジェットコースター映像のBGMにオマエのバンドの曲を起用してやったのワタシだよ」
「え!? ホントに? じゃぁ、ハイ」
「何? この手」
「イヤ、印税」
「何様だよ、オマエは・・・」

家に帰ってこのDVDを観てみた。中にはキャラクター創世紀から飛び出たキャラクターたちが所狭しと活躍していた。オレのユキダルマッチョを差し置いて、コイツらときたら・・・ムムム。うらやましいなぁ。
「ペン大王。オレのユキダルマッチョにも活躍の場をくださいよ」
「活躍の場も何も、ちゃんとキャラクターとして出来上がってないじゃんか。それともこの半年間で何かパワーアップしたとでも言うのか?」
「フッ・・・ユキダルマッチョがこういう形になったのは、あなたの助けがあったからと言っても過言ではないんですがね。あの日、あなたからの電話がなければユキダルマッチョの進化はなかった・・・」