第一回「ペンを捨てよう 街に出よう」の巻

一般すぎるほどの一般人、人間最大公約数ことハギワラノリツグが一流のキャラクターデザイナーになるために、一年間という長い期間に渡って拘束される、ある意味サディスティックな、そしてどっかで聞いたことあるような企画です。
手元にあるのは「手塚治虫のマンガの描き方」という本、一冊のみ。
本を頼りに、手塚治虫に追いつけ追いこせ。
第二の手塚治虫を目指して、半分無理だと悟りながらもガンバります。
だからみんなもただ見てないで、ガンバレっつーの!

運命の邂逅
ペン大王 登場

みなさん、こんにちわ。
ハギワラノリツグです。
実はボクはバンドマンなのです。「バンドマン」がわからない人のためにかみ砕いて言い直しますと、いわゆる「ロックンローラー」です。あ。宇崎竜童とは違いますよ。
一応、インディーズではグイグイキてるバンドでリーダーをやってますが、イマイチ伸び悩んでます。
音楽をやっている動機が不純なのでしょうか?
「有名になりたい」だけじゃダメなのでしょうか?
でも、これを読んでるみんなも有名になりたいでしょう?
そうでもない?
あ。そう。
みんな、消えてなくなってしまえ。

と、いうわけで、疲れた心を癒すために、オレは陽の暮れた公園へやってきた。真っ暗な公園。街灯に薄暗く照らし出された公園は、とてもショボくれてた。ショボくれた公園でショボくれたカップル達が愛を育んでいる。そんな目の前で繰り広げられる三文劇を見ていたら、なんか非常にムカついてきた。
ブチキレたオレは叫んだ。

「有名になりてぇ! っつーか、誰かオレを有名にさせれ!」

その時、背後から声をかけてくる人物が。
「そんなに有名になりたいのかね?」
渋い声だ。八名信夫か?
「イヤ。お気持ちはとても嬉しいのですが、あいにくボクは悪役商会に就職する気はないので・・・」
振り向き様にそう言いかけた時。オレはビビった。そしてブルった。そこにいたのは八名信夫ではなく、なんか、なんというか、なんて言ったらいいのかな。とにかく見たことねぇ生き物だった。
「なんだ、チミは!?」
「ワタシはペン大王。キャラクター創造の神様だ」
「なんか安易じゃねぇか?展開が」
「ほっとけ」
目の前の生き物は「ペン大王」で、なんでも「キャラクター作りの神様」なんだそうだが、世紀末だね。こんなものが見えてしまうとは。疲れてるんだな、オレも。
「はぁ。ペン大王、っすか・・・。そんじゃ、ボク帰って寝ますんで・・・」
「まぁまぁ、待ちたまえ。今、君は『有名になりたい』と言っていたじゃないのか? ワタシが君を有名にしてあげようじゃないか」
「何言ってんの?アンタ」
「本当の意味で『有名になる』ということは、『みんなに好かれる』と同義だと。君もそうは思わないかね?」
「まぁ、そりゃそういうことでもあるとは思いますよ」
「君自信も君がつくる音楽も、世間では嫌われているからね。有名になるのはまずムリだね」
「随分とムカツク神様だね」
「誰にでも好かれるキャラクターを作ってみてはどうかね? 君の分身が好かれることによって、自然と君自身も好かれるようになるだろう」
「オレにキャラクターデザインやれ、って言ってるの?」
「左様。キャラクター創造の神であるワタシが直々に手ほどきをしてあげよう」

キャラクターデザイン・・・

なるほど・・・

めんどくせぇな。

「おい。コラ。どこへ行く?」
「帰るんだよ、うるさいな。オレは音楽でメシ食ってくの。キャラクターデザインなんかやってる暇ないの」
「あ。そう。やらないんだ」
「やらないって言ってるでしょ!? しつこいね、アンタも」
「ふぅ〜・・・残念だなぁ。キャラクター作ってウケたら、有名にはなれるし、女の子にはモテるし、お金も入ってくるのになぁ」
「あ。すみません。やらさせていただきます」