CGの世界にもハイエンドの波は押し寄せている。そこに登場した巷で話題のソフト「FiLM BOX」。このソフトを使うと、レンダリングの待ち時間なく、CG制作ができる・・?!本当にそんなソフトが存在するのか?そんな僕らの夢のソフト「FiLM BOX」の実体と、その使用例を徹底チェック!

人形を動かすとCGも動く
マシンは普通のパーツで
自作したPC
FiLM BOX 作品例
フジTV 特番「骨のある人間の作り方」
タレントとバーチャルキャラクターによるリアルタイムの会話。CGキャラクターをバーチャルセットカメラと連動。背景・人物・キャラクターを、リアルタイムに合成・収録まで行う。実際タレントはブルーバックの前に一人で立ち、会話をしていることになる。
花王CM「デオドラントライナー」
CGアニメーションなのに、クレイアニメのような動き方をする、ちょっと変わった作品。制作はクレイアニメーションのアニメーターによるパペット人形のデバイスを使ったコマ撮り撮影。
HD21「テレペット」
一見普通のアニメだが、動きはFiLM BOXでリアルタイムに収録。 普通だと1週間〜1ヶ月くらいかかるアニメーション付けの作業が、リアルタイムに動きをみながらできるので、たった1日で終わってしまった。
TV東京「マリオスクール」
子供や出演者達がバーチャルキャラクターとゲーム対決を繰り広げる
ブルーバックのスタジオ
とカメラ
カメラとコントロールルームを繋ぐインターフェイス
コントロールルーム
MISSION #03 FiLMBOX
機械式モーションキャプチャーってなに?


 前回、INFERNO編集室をくまなくのぞいて大満足ののぞきみ隊。今回は「これぞまさにハイエンド」といえる情報をゲット!今、テレビ業界やゲーム業界がこぞって導入しようとしている噂のソフト「FiLM BOX」をここMcRAY では早くも実践でつかっているらしいのです。ハイエンドのぞきみ隊としては、のぞいてのぞいてのぞきまくらないわけには参りません。まずはモーションキャプチャーって何?っていう基本的な質問にも優しく答えてくれた、McRAYテクニカルスーパーバイザー三好さんにお話を聞いてみました。


○ハイエンドCGの動向を知ろう!

―― 今はCGの世界も様々なハイエンドの流れがあると思うんですけど、最近の動向を教えて下さい。

三好 僕たちが今目指している一つおもしろいカテゴリーは、リアルタイムをメインにしたものなんですよ。例えばリアルタイムキャラクターを利用したものであるとか、最近でいうとウエブ3Dとか流行っているじゃないですか、うちにはバーチャルセットやモーションキャプチャーシステムがあるし、その辺の、要はリアルタイムで何かできないかなというところで今いろんなことを考えている最中です。

―― えっと、人間の動きそのままをCGデータに取り込むシステムが「モーションキャプチャー」でしたよね・・?

三好 はい、そうです。

―― 確かデータの取り込みにもいくつか方式があったと思うのですが、現在のモーションキャプチャーの主流は何式ですか。

三好 今主流なのは光学式と磁気式ですよね。それもその動きによって使い分けるケースが出てきていますね。

―― 磁気式はコードがつながっているんですっけ?

三好 そうです。たとえば転げ回る場面では、磁気式だといろんなものが体中についているので、でんぐり返しのようなことができない。そういう場合は、光学式の方がやりやすかったりするんだけど、光学式はうずくまるとか全部隠れちゃうような動きが苦手。だからその動きによって使い分けをしていますね。

―― なるほど。その二つの使いわけが主流なんですね。

三好 あとはMcRAYの特徴として、機械式というのを導入してるんです。これは、パペット人形自体にワイヤーがついてて、そのパペットを動かしながら使うものです。

―― これだと実際の人間が装着するわけじゃないから、まさに人形アニメーション的な動きがキャプチャーできるんですね。

三好 そうなんです。実はこのパペット人形を使ってのモーションキャプチャー作業も、今絵を出しているこのソフトが最近できたから、ようやくリアルタイムに作業できるようになったと。

―― そのソフトが巷で話題の「FiLM BOX」ですね!

三好 ええ、やっぱり「FiLM BOX」を使うと本当に簡単にモーションがつけられるんです。CGって一個一個こうやって動かすよっていうキーフレームを打って、全体でレンダリングして、それをアニメーションで確認して、みたいなところがすごい手間じゃないですか。これを使うとリアルタイムに絵が出ているのをモニタで確認しながら、その動きがそのまま収録できちゃうんです。そうするとアニメーションづけはそれで終了、っていう利点もあって。

―― このレスポンスの速さが「Film BOX」というソフトを使う大きな利点なんですね。

三好 そうなんですよ。リアルタイム最優先で開発がされているソフトですから。 だからこのシステムのもう一つの使い方としてはリアルタイムコンテンツとして番組系でそのまま流すというやり方。最近TVでよくみる光景だと思うのですが、実写のタレントさんとCGのキャラクターが会話したりしますよね、あれです。

―― じゃあ、あれは本当にリアルタイムにCGとタレントが会話できてるんですね。

三好 撮影はブルーバックですのでタレントさんは何もないところでCGキャラクターに話しかけてることになりますが、リアルタイムでCGと実写とが合成された画面がみれるので、お茶の間には、二人が会話してるようにみえるというわけです。

―― ところで、「Film BOX」は何で動いているんですか。

三好 ただのPCです。Windows NT。

―― ハイスペックなものですか。

三好 グラフィックス関係をハイスペックにしないと、パフォーマンスがやっぱり出ないですけど、最近のPCは速くなりましたからね。FiLM BOXを使うと、レンダリングが一枚一秒ぐらいで終わっちゃうんです。だからあっという間に三分とかつくれちゃうんです。

―― すごいですね。じゃあほぼリアルタイムでつくっているということですか。
三好 そう。アニメーシションも全部リアルタイムで動いていますからね。

―― しかもPCベースなんてすごすぎますね。ソフトはいくらぐらいするんですか。

三好 うちは一番高いのを持ってるんです。バージョンがあるんですけど、これで400万円ぐらい。

―― できることを考えると安いのかもしれないですけど、やっぱ僕ら一般ユーザーには手が出ない額ですね・・・。しょぼーん。

○バーチャルキャラクターの現状

バーチャルキャラクターを使った番組「マリオスクール」をみせてもらいながら。

―― この番組はこのバーチャルスタジオで撮影したんですか?

三好 ええ。このスタジオで全部。これはキャラクターを三体つくっていて、子供十人が対戦したいキャラクターを選んで、ゲーム対決をする番組なんです。

―― 実写とバーチャルキャラクターのリアルタイムでのやりとりがある番組なんですね。こういう番組制作って結構需要があるんですか?

三好 需要があると思います。たとえばテレビ番組関係者の企画案とかを見ても、「バーチャルキャラクターを出したいんだよ」っていう相談は非常に多いんです。テレビを観てても結構増えてきていたりはするんですけれど、実はものすごく技術的に大変なんですよ。

―― 最新技術の結集みたいなものなんですね。

三好 ええ、でもそれで今現在やっとあのレベル。だから今後まだまだクオリティもだいぶ上がるだろうし、キャラクターを出すための手段というのはいろいろなことが開発されていくとは思うんですけれどもね。

―― 実際、今は生放送に使えるくらいシステムが確立されてるんでしょうか?

三好 現実的には生放送はまだきびしいでしょうね。マシンの安定性はだいぶ上がってきたんですけれども、予期せぬ動きをすることがあるんです。パペットをいじってもらうとわかるんですけれど、あってはいけない動きをさせることは簡単にできるんです。CGですから、手が体を突き抜けてしまうとか、腕が反対方向によじれてしまうとか。それを避けるためにも収録をした方がいいかなと。

―― 今のところはリアルタイムとは言っているものの、収録をして多少番組的に編集をして、みたいな形で使われる場合が多いと?

三好 ええ。その方がいいでしょうね。ただ収録後にCGの手直しをいれるわけではなく、CGの動きがうまくいかなかった場合、そのテイクはNGでもう一回撮りなおすというやり方をしています。

○バーチャルスタジオとの連動

三好 で、この撮影用のカメラなんですが、隣の部屋のマシンにつながっているんです。カメラのいろんなところにセンサーがついているので、このセンサーの値をひとまとめにして、CGをレンダリングするためのカメラのデータに変換しているマシンが一個あるんです。この撮影用カメラを動かすと、CGの中のカメラもそのまま動いて背景がレンダリングされるんです。

―― 連動させる時の苦労ってあります?

三好 これがまた非常にややこしいんですよ。レンズをどれだけズームをすると、どれだけ画角が狭くなるかっていうデータをすべてサンプリングして入れていますから。だからレンズが変わるともうついてこないというような状況なんです。

―― キャラクターはこちらで開発するんですか。

三好 キャラクターの元の2Dデザインはいただいて、立体にしたのはこちらでやりました。立体にしてそのキャラクター性を持たせるためにどうするかとかっていうのは、全部こっちでやっています。

―― キャラクターを動かすのは専用のスタッフとかですか?

三好 いえ、番組のときはADにやってもらうんですけれど、それ以外はうちの人間がやっています。ちょっと器用でセンスがあればだれにでもできますよ。

―― 素人でも操作できてしまうんですね。知らないところですごいことが起こっているんですね・・。

三好 リアルタイムでレスポンスが速いからこそ可能になったことがたくさんありますね。だからFiLM BOXの取材がこの間もあったし、結構最近増えてきて、たぶん日本でこれだけ使っているのはうちだけだから(笑)。




バーチャルキャラクターを使った番組制作の裏側には、最先端の技術がいっぱいつまってるんですねー。それにしてもFiLM BOXの出現でこの分野は飛躍的に伸びていきそうな気配。これからもテレビでも頻繁にみることになりそうだから、要チェックです!
さーて、のぞきみ隊は更なる刺激を求めて次の獲物を探し中。ハイエンドよー、かっかてこい~!オリャー!!