橋爪祐輔 |
「とにかくうちの社長が、完成前のラフカットを見るなんてめったにないことなんです。いろんなところで前評判を聞きつけたんでしょうが、ぼくらも苦労のしがいがあります」 |
津村美沙 |
「やっとここまでこぎつけた、という感じね。迷惑をいっぱいかけたけど、あなたがいてくれたおかげだと思う」 |
橋爪祐輔 |
「とんでもない。才能ある監督やプロデューサーと組め、こちらこそ感謝しなければなりません。公開時期をずらし、東京映画祭のコンペ作品に内定させたのだって、社長なりの自信と期待の表れなんですから」 |
津村美沙 |
「そう聞くとこうして呼び止められても安心するわ。ただでさえ期限を過ぎてるのに、ファイナルカットが定まらず神経過敏になってるのかしら」 |
橋爪祐輔 |
「挨拶するだけのようですから気になさらないでください。映画会社の社長といっても、もともと撮影所にいましたからクリエイティブな人間にはすごく理解があるんです」 |
津村美沙 |
「私たちにとっては雲の上の人よ」 |
橋爪祐輔 |
「(監督に目をやりながら)それにしても遅いなあ。ちょっと秘書室へ行ってきます」 |